2012年4月8日日曜日

チェルノブイリ子ども基金NEWS No. 88 「ふくしま便り」

チェルノブイリ子ども基金 NEWS
放射性プルームが通った街
~暗闇のなかに希望の光を~
1年前のあの311日、すべてが一変しました。冒頭から私事ですが、あの日以来、山形県との県境・飯豊山麓に住む娘と孫たちをわが家に招くのはご法度になってしまいました。郊外の登山やハイキング、公園の散策や地元産食品の買い物…自然豊かな都市の楽しみの多くが無に帰してしまいました。
33日付け毎日新聞は、政府が川内村の警戒区域を「年間の被曝量が20ミリシーベルト以下であることを踏まえ」解除する方針と伝えました。昨年4月、文部科学省が学校施設利用の判断のための暫定基準値20ミリシーベルトを福島県教育委員会に通知し、その後、県民の激しい抗議を受けて、当時の高木文科相が「1ミリシーベルトを目指す」と公言しましたが、このニュースは、法令で定める一般人の年間被曝許容基準1ミリシーベルトの20倍という途方もない暫定基準にいまだに政府が固執していることを示しています。
私の居住する公営住宅自治会が作成した小学校通学路放射線モニタリング・マップ(1228日計測)によれば、集団登校の集合場所をはじめ多くの地点で毎時1マイクロシーベルトを超えています。放射線管理区域基準の時間あたり換算値0.6マイクロシーベルを優に超える場所で、子どもたちはマスクすらも着用せずに通学し、遊んでいるのです。
原発災害が福島県の広大な地域にもたらしたものは、目に見えない放射能による汚染だけではありません。佐藤雄平県知事による「風評被害」撲滅・地産地消奨励・人口流出抑制政策、山下俊一県放射線健康リスク管理アドバイザーらによる安全・安心キャンペーン、郡山市の法曹界・医療団体・商工会が一丸となった200万人署名運動などによって、県民の多くは「見ザル、聞かザル、言わザル」の三猿状態に押し込められ、あたかも目に見えない戒厳令体制が県土をおおってしまったかのようです。
昨年6月、おおっぴらにものも言えないような重苦しい社会的雰囲気のなか、郡山市内の小中学生たち14人が「年間1ミリシーベルト以下の安全な場所での教育の実施」を求める仮処分を福島地方郡山支部に申し立てました。
債権者(原告)側は、子どもたちの通うすべての小中学校の放射線値がチェルノブイリ事故の「強制避難」基準(年間5ミリシーベルト)を超えると立証する矢ヶ崎克馬・琉球大学名誉教授の意見書など、外部被曝と内部被曝の両面の見地から健康被害の恐れを示す数々の証拠を提出しましたが、それに対して、債務者(被告=郡山市)側はなんら具体的に反証しないまま、現在の放射線値は落ち着いている、郡山市による除染努力によって放射線値の低減が見込まれる、原発事故の責任は郡山市にはない、債権者らには転校の自由があるなどと主張するのみで、申し立て棄却を求めました。
裁判が異例に長引いたことから、当初、慎重に検討しているのではと期待されていましたが、12月になって出された判断は「申し立て棄却」でした。「100ミリシーベルト未満の低線量被曝の晩発性障害の発生確率について実証的な裏付けがない、文科省通知では年間20ミリシーベルトが暫定的な目安とされた」などと、裁判所みずからが御用学者たちの言い草を丸呑みし、行政府の方針を追認するのです。
裁判所は、三権分立制度に占める法の番人たる立場を放棄して、原発ムラの番犬に成り下がりました。県内メディアが裁判の意味をまったく伝えないことも合わせて、被曝地をおおう暗闇はますます深くなりました。
だが、暗闇のなかにこそ希望の光を高く掲げなくてはなりません。棄却を不服とする子どもたちが仙台高等裁判所に即時抗告する一方、ふくしま集団疎開裁判の会は、この裁判そのものを市民の見識で裁く「世界市民法廷」を東京と郡山で開廷するなど、福島の子どもたちが置かれた状況についての情報を国の内外に広く発信し、「子どもたちの命と健康、そして未来を守れ!」と訴えつづけてゆくでしょう。
ふくしま集団疎開裁判の会 井上利男(福島県郡山市)
201234日記


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チェルノブイリ26周年 救援キャンペーン「チェルノブイリと福島」講演会

申込受付中!(お申し込みはこちらから)



日時4月22日(日)開場13:00  
           開演13:30~終演16:30

場所明治大学駿河台キャンパス リバティホール
    (リバティタワー1F 1013教室)
        JR・東京メトロお茶の水駅より徒歩5分

内容

◆スライド講演 広河隆一
フォトジャーナリスト・DAYS JAPAN編集長、「チェルノブイリ子ども基金」顧問、「未来の福島こども基金」世話人 
◆ポホモワ・ワレンチーナ
ベラルーシ ゴメリ市在住。チェルノブイリ事故被害児童を援助している慈善団体「困難の中の子どもたちへ希望を」代表
ゼレンケヴィチ・オリガ
ベラルーシ ゴメリ市在住。ポホモワさんの娘。事故当時3歳。7歳のとき甲状腺の手術を受けた。
武藤類子
福島県三春町在住。「ハイロアクション福島原発40年」実行委員
◆富塚悠吏(10歳)
郡山市から横浜市に避難している。1/14「脱原発世界会議の開会式で、
福島第一原発事故の被害を受けた子どもの代表として「原発はいらない」と訴えた。
黒部信一
小児科医、「チェルノブイリ子ども基金」顧問、「未来の福島こども基金」代表


資料代1,000円
【主催】チェルノブイリ子ども基金、未来の福島こども基金、現代史研究会
【問合・申込先】申込受付中!(お申し込みはこちらから)
        チェルノブイリ子ども基金 事務局
        TEL/FAX:03-5228-2680
        Email:cherno1986@tokyo.email.ne.jp


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