2012年10月3日水曜日

「甲状腺癌は放射線と無関係」決定は秘密会で

さて、本日(103日)付け毎日新聞が驚くべきというか、それともじゅうぶん予測されていたというか、ともかく大変なスクープをものしてくれました…
福島健康調査:「秘密会」で見解すり合わせ
毎日新聞 20121003日 0231分(最終更新 1003日 0512分)
福島健康調査:「秘密会」出席者に口止め 配布資料も回収
毎日新聞 20121003日 0230分(最終更新 1003日 0514分)
時間を戻して911日、同じ毎日新聞は次のようなニュースを、どちらかといえば短信扱いで報道していました…
甲状腺がん:検査で子ども1人確認 原発事故と関係否定
毎日新聞 20120911日 2033分(最終更新 0911日 2213分)
福島県の子どもの甲状腺検査で初めて1人が甲状腺がんと診断されたことが11日、県民健康管理調査の検討委員会(座長=山下俊一・福島県立医大副学長)で報告された。同大で担当の鈴木真一教授は「チェルノブイリ事故後の発症増加は最短で4年」などとして、福島第1原発事故との因果関係を否定した。……
40歳以上の特に男性で、肥満や肝機能異常のある人の割合が震災前より増えたことも報告された。避難生活のストレスなどが原因と考えられるという。【乾達、泉谷由梨子】
地元紙・福島民報の記事は、もう少し詳しく報道していましたが、それでも徹頭徹尾、翼賛的な安全キャンペーンで貫かれていました…
11日に福島市で開かれた県民健康管理調査検討委員会で、福島医大は子どもを対象とする甲状腺検査について、二次検査の結果、1人の甲状腺がんが確認されたと報告した。検査で甲状腺がんが見つかるのは初めて。福島医大は「放射線の影響ではない」としている。……
福島医大は対象者についてプライバシー保護の観点から性別や年齢、住所、被ばく線量などを公表していない。……
甲状腺検査で甲状腺がんが見つかったことについて、調査を担当する県民健康管理調査検討委員会の鈴木真一福島医大教授は「内部被ばくのあったチェルノブイリ事故でさえ甲状腺がんは発生まで最短で4年。本県では広島や長崎のような高い外部被ばくも起きていない。事故後1年半しか経過していない本県では、放射線の影響とは考えられない」と東京電力福島第一原発事故の影響を否定した。 
検討委の座長を務める山下俊一福島医大副学長も検討委として同様の見解を示した。……
首都大学東京大学院放射線科学域長の福士政広教授は「甲状腺がんの進行は遅く、現段階で原発事故の放射性ヨウ素を原因とする症状が出ることは考えられない。今回症状が確認された人は原発事故以前から発症していたはずだ」と指摘する。
 2012/09/12 09:08
その後、東京新聞が追跡調査報道を続けているのを知りました。残念ながら同紙は原発事故被災現地・福島県では配達エリア外ですし、特報記事はネットサイトにも掲載されていません。
そこで画像投稿サイトを利用するほかありません…
Twitpic

東京新聞 2012年(平成24)9月22日(土曜日) こちら特報部
「子ども1人甲状腺がん」の波紋 事故影響否定は早計
福島の保護者「一刻も早く避難を」
十一日に開かれた福島県の県民健康管理調査検討委員会の席上、十八歳以下の子どもの甲状腺検査で一人が甲状腺がんと報告された。県側は福島原発事故の影響を否定したが、チェルノブイリ原発事故の影響を調べてきた専門家たちは「否定の判断は時期尚早」と警告する。子どもたちの避難を求める声がより強まっている。 (中山洋子)
「福島の子どもたちを守ってほしい。もう一刻の猶予もない」
二十一日夕の文部科学省前。国の対応に抗議する福島の保護者からは、同県の子どもたちの避難を急ぐ声が相次いだ。……
この記事から小児甲状腺疾患についての発言をピックアップしてみると…
調査主体の福島県立医大の鈴木真一教授は、一九八六年のチェルノブイリ原発事故でも、事故による甲状腺がんの発見は発生から四年後だったとして、福島原発事故との因果関係を否定した。……
チェルノブイリ事故の影響に詳しい京大原子炉実験所の今中哲二助教「チェルノブイリでは、事故から四年以内にも甲状腺がんが見つかっていたが、事故との関係はよく分からなかった。四年後に甲状腺がんが急増して、原発事故の影響と断定された。ただ、当時も当初は『事故の影響としては(四年は)早すぎる』と、一度は否定された…チェルノブイリの経験を踏まえるならば、否定は早計。専門家は謙虚に観察するべきだ」
北海道深川市立総合病院の松崎道幸医師によると、チェルノブイリ原発事故では、九一~九六年に周辺の十八歳未満の十六万人が甲状腺検査を受けた。その結果、のう胞の保有率がO・5%だった…「のう胞のサイズが不明で単純比較はできないが、今回ののう胞保有率は過去例と比べて高い。数力月単位で、きちんと検査する必要がある」
次いで、小児甲状腺がんに詳しい医師の菅谷昭・松本市長の登場です…
Twitpic
東京新聞 2012年(平成24)9月27日(木曜日) こちら特報部
福島で小児甲状腺がん 「事故無関係」危うい判断
医師の菅谷松本市長が警鐘 チェルノブイリ翌年から増加
福島原発事故に伴う福島県の調査で、一人に小児甲状腺がんが見つかった問題。同県立大は事故の彰響を否定したが、一九八六年のチェルノブイリ原発事故後、現地で申状腺がんの治療に当たった医師の管谷昭・長野県松本市長は「即断は禁物」とし、丁寧な対応を訴える。(中山洋子)      
「このデータをまさか日本で必要とする日が来るとは思わなかった」
 そう語りつつ、菅谷市長はベラルーシ国立甲状腺がんセンターから入手した小児がん患者数(十五歳未満)の推移のデータを示した。……
菅谷市長が注目するのは、ベラルーシの場合、八六年には二例だった小児甲状腺がんが、翌年には新たに四例、八八年に五例、八九年には七例と増加している点だ。……
菅谷昭市長の発言をピックアップしてみると…
「ベラルーシでは、転移していたケースが非常に多い。将来にわたって、注意探く経過を追わなければならない」
「しこりがあると言われたら、親は心配するに決まっている。でも、同じしこりでも水のたまったのう胞はがんにはならない。心配なのは肉のかたまりである結節。一人一人への丁寧な説明を怠ってはならない」
「心配な保護者には、むしろ他の機関でも調べることを勧めるべきだ。データをまとめるには、県立医大に送るよう指導ずればよい。保講者の不安解消が大切だ」
ここで時間を戻して当ブログの913日付け記事を振り返ってみよう…
被曝の国の福島県立医大訪問記
@yuima21c
ツイート・ログ(12.09.13)
⑥鈴木真一福島医大教授「内部被ばくのあったチェルノブイリ事故でさえ甲状腺がんは発生まで最短で4年。本県では広島や長崎のような高い外部被ばくも起きていない。事故後1年半しか経過していない本県では、放射線の影響とは考えられない」 http://besobernow-yuima.blogspot.jp/2012/09/blog-post_12.html
⑦そこでわたしは、内閣府・原子力委員会サイトに2011524日付で掲載された http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/bunka5/siryo5/siryo42.htm 山下俊一氏の2000225日付論文「チェルノブイリ原発事故後の健康問題」にあるデータを示した http://besobernow-yuima.blogspot.jp/2012/09/blog-post_12.html
2000年の山下氏論文によれば、1985年と86年のベラルーシ共和国ゴメリ州における小児甲状腺癌の登録数は各1件であり、事故翌年の87年には4件発症し、883件、895件と続いている http://besobernow-yuima.blogspot.jp/2012/09/blog-post_12.html
⑩その後、チェルノブイリ事故4年目の1990年には15件、91年には47件と小児甲状腺癌の登録数が急増している。このデータを踏まえて、鈴木真一福島医大教授は「甲状腺がんは発生まで最短で4年」と発言したのだろうが、鈴木氏は87年から89年までの発症例を無視しており、この発言は虚偽
⑪この疑問に対して、広報部門長の松井史郎特命教授は新聞報道が正確ではなく、「あなたがたは報道に抗議しなければならない」と発言。わたしは「事実無根の報道であっても、信じるか信じないかはわれわれの勝手であり、抗議しなければならないのは、当事者のあなたがた福島県立医大である」と反論。
⑬福島県庁の秘書課職員3名相手の交渉は、ことさら報告するほどの成果もなかった。鈴木真一教授発言の矛盾に関しても「学問上の総合的な判断」というのみで、なんらの進展もなかった。内部被曝にしても、半減期の短いヨウ素について問い詰めたかったが、発言者も多かったことで時間がなかった。
さて、いよいよ今日になって毎日新聞のスクープである…
福島健康調査:「秘密会」で見解すり合わせ
毎日新聞 20121003日 0231分(最終更新 1003日 0512分)
東京電力福島第1原発事故を受けて福島県が実施中の県民健康管理調査について専門家が議論する検討委員会を巡り、県が委員らを事前に集め秘密裏に「準備会」を開いていたことが分かった。準備会では調査結果に対する見解をすり合わせ「がん発生と原発事故に因果関係はない」ことなどを共通認識とした上で、本会合の検討委でのやりとりを事前に打ち合わせていた。出席者には準備会の存在を外部に漏らさぬよう口止めもしていた。
福島健康調査:「秘密会」出席者に口止め 配布資料も回収
毎日新聞 20121003日 0230分(最終更新 1003日 0514分)
東京電力福島第1原発事故を受けた福島県の県民健康管理調査について専門家が意見を交わす検討委員会で、事前に見解をすり合わせる「秘密会」の存在が明らかになった。昨年5月の検討委発足に伴い約1年半にわたり開かれた秘密会は、別会場で開いて配布資料は回収し、出席者に県が口止めするほど「保秘」を徹底。県の担当者は調査結果が事前にマスコミに漏れるのを防ぐことも目的の一つだと認めた。信頼を得るための情報公開とほど遠い姿勢に識者から批判の声が上がった。【日野行介、武本光政】
………
秘密会の日程調整などを取り仕切っていた福島県保健福祉部の担当者との主なやり取りは次の通り。
−−検討委の会合ごとに秘密の準備会を開いていなかったか
記憶にない。
−−昨年7月、秘密会の会場を急きょ変更し、口止めを図ったことはないか。
……覚えていない。
−−検討委の約1週間前に委員を呼び出したり、検討委と別に会場を設けたりしていなかったか。
……確認のため時間をください。
 <約1時間中断>
−−確認できたか
指摘の通りの事実があった。毎回準備会を開催していた。
−−調査結果や進行についてあらかじめ話し合っていたのか
事前に調査結果を説明し、委員に理解してもらったうえで臨んでほしかった。事前に調査結果を配りたいが、それができない。
−−マスコミに漏れるからか
それもある。
−−なぜ隠していたのか
隠していたつもりはないが、積極的に知らせるのは避けた。ナーバスになっていた。
−−県民に不安を与えないように検討委を進めたかったのか
それはあった。秘密会合と言われても否定できず、反省している。こうした準備会は(今後)開催しない。

さて、いかがでしょうか? これが政治家のスキャンダルや原発推進派の秘密会なら、メディアが一斉に跳びついて、大騒ぎになるはずですが…
【関連記事】
【資料】福島県・子どもの甲状腺検査結果と甲状腺癌報道
被曝の国の福島県立医大訪問記 @yuima21c ツイート・ログ(12.09.13)

エートス、その他の被曝問題に関連する記事・情報リンク集


【続報】2012.10.04
翌日、毎日新聞が続報記事を掲載しました…
福島健康調査:「秘密会」で副知事が陳謝
東京電力福島第1原発事故を受けて福島県が実施中の県民健康管理調査について、専門家による検討委員会に先立ち秘密裏の「準備会」が開かれていた問題で、村田文雄副知事は3日の県議会で、「準備会を公表せずに開催したことで誤解を招いたのは大変遺憾。県民の皆様に深くおわび申し上げる」と陳謝した。
その他の村田副知事のことばを拾ってみましょう…
「検討委員会の議論の促進を図るため、主に資料を(委員に)説明する場として設けた…委員の意見などをあらかじめ調整した事実はない…指摘を真摯(しんし)に受け止め、事前会合の要否も含め検討委員会の運営について情報公開を徹底したい」
ブログ子の論評としては、とりあえず次のツイッター投稿でじゅうぶんでしょう…
inoue toshio 子どもを守れ! @yuima21c
福島健康調査:「秘密会」で副知事が陳謝 #毎日新聞http://sp.mainichi.jp/rd/rd_0001_04.html?id=0001_04&cid=20121004k0000m040043000c&fm=snsx … 「誤解を招いた」のではなく、「実態がばれた」が正解!「委員の意見などをあらかじめ調整した事実はない」この釈明自体が見え見えのウソと見抜いている人は、RT開く   返信   お気に入りに登

ここまでお読みくださってありがとうございます。最後に報道ステーションの10月3日付けニュースのDaily_motion映像をどうぞ…

福島県健康調査で「秘密の会合」 投稿者 tvpickup

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