2012年12月3日月曜日

#ICRP #WG84 報告を読む「1.放射線リスクの推測(および名目リスク係数に対する誤解)」


ICRP放射線防護システムに照らして
日本における原子力発電所事故に学ぶ
初期段階の教訓に関する第84作業部会の報告
1.放射線リスクの推測(および名目リスク係数に対する誤解)
事故のあと、じっさいの放射線被曝リスクはICRPが勧告する名目リスク係数よりずっと高いのではないかという主張が団体やメディアからあがった。メディアにおいて、とりわけ日本で広範な視聴者をもつTVワイドショーにおいて、低線量域における放射線リスクを見積もるためにICRPが用いる線量および線量率効果要因が問題になった。
放射線防護目的で用いられる名目リスク係数の基本概念を支持する健全な生物学、疫学、医薬学研究団体が日本の一般国民に誤解され、残念なことにメディアがこの誤解に加担した。線量・線量率効果係数(DDREF)という概念が特に誤解された。なぜなら部分的には、その用語が英語のままでさえ、どこか込み入っており、日本語その他の言語に翻訳された場合、なおさら複雑になるからである。
電離放射線に起因する健康リスクに関する生物学・疫学的情報を精査した結果、新たなICRP勧告は、過剰な癌および遺伝効果による複合的な損失に関する従来の見積りを再確認するものになり、有効線量1シーベルトあたり5パーセント内外とする数値を変わりなく維持することになった。この値は放射線リスクに関する国際推計、すなわち原子放射線の影響に関する国連科学委員会 (UNSCEAR, United Nations Scientific Committee on the Effects of Atomic Radiationによる見積りと首尾一貫して一致するものであり、したがって、放射線リスクがICRPによって過小評価されているという主張は実証されない。
ICRP84作業部会勧告】
潜在的健康効果に対する放射線リスク係数が正しく解釈されること。
【用語検索】
名目リスク係数 nominal risk coefficient
単位線量(1シーベルト)当たりの被ばくによって確率的影響が起こる確率を、名目リスク係数という。ICRP2007年勧告で用いられており、ICRP1990年勧告での、名目確率係数(nominal probability coefficient)に相当する。nominal fatality probability coefficient
dose and dose-rate effectiveness factor
dose and dose-rate effectiveness factorの検索結果数:0
【訳者による読解】
ICRP84作業部会(以下、当シリーズでは「WG84」と略称)は、その報告第1項においてのっけから、「ICRPの放射腺被曝による健康リスクの見積りが過小評価である」という根強い批判に対して反論を試みているようです。
だが、批判者を具体的に名指さず「団体やメディア」と記すのみ、特に「広範な視聴者をもつTVワイドショー」を槍玉にあげています。しかも「健全な生物学、疫学、医薬学研究団体が日本の一般国民に誤解され」と断言し、批判の原因は、一般国民の誤解、無知によると決めつけているかのよう。
確かに、ICRP勧告の用語と概念は難しい。上記用語集を検索しても「名目リスク係数」は、「確率的影響が起こる確率」であるとおぼろげに理解できるだけで、具体的なイメージがともないません。ましてや「線量・線量率効果係数」となれば、“健全”でご立派な「公益法人放射線影響協会」ご提供の用語辞典でさえも、検索をたらい回しするのみで、結局、語義でさえも示すのを放棄しています。
こうした事情を、WG84は「用語が英語のままでさえ、どこか込み入っており、日本語その他の言語に翻訳された場合、なおさら複雑になる」と弁解しています。これには開いた口がふさがりません。
真理は単純なはずです。かのアインシュタインは、深遠な相対性原理を“E = mC2というごくシンプルな数式で示しました。
結局、WG84が本項で主張するICRPの正統性の根拠は、「健全な生物学、疫学、医薬学研究団体」の支持と「原子放射腺の影響に関する国連科学委員会」によるお墨付きだけ。これでは、助さん(角さんだっけ?)が「控えおろお~!ヒカエ~~ッ!この紋どころが目に入らぬか!」と振りかざす水戸黄門さまのご印籠とたいして違わないですね。

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