2013年1月9日水曜日

『#チェルノブイリの長い影』 ⑪特定の代謝異常に特有の特徴



【資料】
衆議院チェルノブイリ原子力発電所事故等調査議員団報告書
7.
        調査の概要
(1)ウクライナ
③チェルノブイリ博物館視察
   表示(29.6MB)
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(資料)
『チェルノブイリの長い影~チェルノブイリ核事故の健康被害』<研究結果の要約:2006年最新版>


特定の代謝異常に特有の特徴

数年間にわたり、チェルノブイリの放射線による悪影響を受けた子供の同じ対象集団(コホート)について、比較的汚染の少ない区域の子供と比較しつつ、動的な監視および観察を行い、脂質交換、カルシウムーリンのホメオスタシスの状態、ビタミンD3の交換をはじめとする代謝の健康状態の指標を検肘した。脂質は細胞膜および細胞内膜の基本的な構造成分であることを考えれば、交換過程の障害や破壊が、子供の体にみる多数の臓器や系の機能に悪影響を及ぼし、これにより多くの病状を来す可能性はあると思われる。汚染区城に居住する健康な子供の血液組織にみるフリーラジカルの含有量を検査したところ、比較的汚染の少ない区域の健康な子供(445.0±36.0imp./分)より、フリーラジカルの酸化レベルが有意に高かった(12780±86.0imp./分)ことがわかった(図12)。

12子供の血清中のフリーラジカル量(imp/分)


このことが、放射線量の高い地域に居住する子供が、著しい脂質のフリーラジカル酸化を被っているとの主張の根拠となっている。研究から、膜の脂質成分が破壊されていることが認められ、比較的汚染の少ない地域の子供にみられるレベルと比較すると、赤血球細胞(赤血球)膜での総脂質、リン脂質および総コレステロールが増大したことで顕著となった。
以上の研究を実施した研究者らの見解では、高コレステロール血症を来すと確実に、フリーラジカル酸化の活性化に対する保馥特性がみられると考えられている。高コレステロール血症および電離放射線の活性が合わさると、それぞれ個別に活性した場合より脂質の過酸化や酸化が顕著にかつ急激に増強する。脂質の過酸化や酸化が始まると、糖分解作用などの、細胞内での交換過程の崩壊が起こる。さらに、膜の脂質成分の破壊により、検査を受けた子供のタンパク質に構造的な機能変化が起きることがある。レーザーによる相関分光法を用いて血清の積分特性を評価したところ、血清のいわゆるタンパク質-脂質粒子の大きさと寸法を明らかにすることができた。・また、放射線影響下において、血清のタンパク質-脂質粒子および複合体の大きさに質的変化がみられ、小粒子は減少し、大粒子は増大する傾向にあることがわかった。このことは、フリーラジカル酸化が活性化し、脂質過酸化が開始すると、膜内のタンパク質-脂質間の関係が崩壊することを示すものであった。タンパク質脂質の連携に災常が現れたことにより、放射線に曝囃した子供のコホート内で、細胞が劣化して不安定になっていることを示す赤い血球(赤血球)の酸耐性が崩壊していることもわかった。
以上。の研究結果から、汚染区域の子供の赤血球の浸透圧安定性が低下していることがわかり、放射線への曝露を受けた子供の細胞の浸透性に乱れが生じていることが明らかとなった。赤血球産生賦の低下を背景にレf供は、さまざまな身体疾患の発症や慢性疾患への移行の根拠となる、組織の低酸素症を来すことがある。このため、子供は病気にかかりやすくなり、一度かかると長引く傾向にある。カルシウムの移行にみられる膜メカニズムの崩壊と、ホメオスタシスのアンバランス(細胞内カルシウム含有賦の増大、またはカルシウムが細胞から出てくる速度の低ドによる石灰化)も、生体の取大な病理過程の発生と第一に結び付くものとなっている。生体のカルシウム交換が崩壊するとよ子供に病気への高罹患率、長期化、重症化、自律神経障害および骨系病変などか起こることがある。
3曝露したグループの子供の血液の乳清中にみられる総カルシウム、無機リン、マグネシウム、銅、鉄および250HD3の維持指数

動的研究調査の過程において、汚染地域に居住する子供のカルシウム―リン交換の長期崩壊が、納得のいくかたちで明らかにされた。低年齢の子供にみられる心筋梗塞(心発作)などの心血管疾患のリスクおよび出現の増大は、細胞レベルで発生する傷害過程によってもたらされることもある。甲状腺癌のように、心血管疾患は、成人には頻繁に発症するが、子供に発症するのは比較的まれである。世界各国の保健社会は今後も、チェルノブイリが子供、青年および若年成人の心血管の健康に及ぼす影響を検討することが必要とされている。
汚染区域の子供のミネラル交換に関する研究では、カルシウム―リンのホメオスタシスの崩壊のほかにも、マグネシウム、銅および鉄の交換の崩壊も認められた(表3)。
このことから、子供の生化学過程に関する徹底的なモニタリングでは、放射線汚染区域に永久的に居住する名目上健康な子供でも、脂質のフリーラジカル酸化の活性化により、複雑な有害代謝性変化が起こり、これによって細胞膜の構造機能特性が崩壊することが明らかにされた。これには、特に毒性に対する細胞の耐性の低下や、細胞質内での必須ミネラル成分の濃度の減少を説明する物質の移動などの、機能活性の変化を伴っていた。いずれも、有機組織の低酸素症の発症の原因となる可能性があり、子供の身体疾患の発症の土台となることがある。また、この疾患は、比較的汚染の少ない地域の子供より著明かつ頻度が高いように思われる。これ以外にも、放射線汚染区域に居住する子供からは、多くの代謝過程に悪影響を及ぼすミネラル不足が明らかにされている。

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