2013年11月13日水曜日

#RT クリス・バズビー「#チェルノブイリ より危険~#フクシマ 危機の内なる脅威」




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チェルノブイリより危険~フクシマ危機の内なる脅威
クリストファー・バズビーChristopher Busby)は、「欧州放射線リスク委員会」(ECRREuropean Committee on Radiation Risk)の科学委員。
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津波で損壊した東京電力福島第1原子力発電所の放射能汚染水タンクの近くにいる防護服・マスク姿の作業員たち。(Reuters / Issei Kato

筆者は最近、この影響――長引きはするが、すくなくとも突然死にはならない病気――は永久につづくに違いないと指摘した。しかし、今週、潜在的突然死部門において、新たな展開がはじまった。
フクシマに、奇妙で破天荒な自然の逆転がある。まるで鏡のなかの世界だ。タイタニックのような通常の海難事故の場合、沈没を避けるために必死になって水を汲み出す必要があるが、フクシマの場合、勝算は、メルトダウンと爆発を避けるために、必死になって注水する(madly pump water in)ことにかかっているのである。
おそらく、複数の原子炉と使用済み核燃料プールを冷却するために注水することによって、地下が飽和状態になり、そのために建屋の基礎が危うくなったのが理由だろうが、東電は、4つの事故現場のなかで、たぶん最も危険な部分、4号炉の使用済み核燃料貯蔵プールになんとか対処するために作業を急いでいる。この貯蔵プールが実に膨大な量の放射性物質を収納しているからである。ウラニウムとプルトニウムの総量で228.3トンに達する、1331の使用済み核燃料収納枠がプールに沈められており、このプールはかつて冷却水を喪失し、爆発している。この爆発によって、未知だが相当量の放射性の細片と核燃料ペレットが現場に飛び散った訳注(ブルで地中に埋め込まれたと聞くが、だれにわかるだろうか)が、建屋の屋上階もやはり吹き飛び、水面下の核燃料集合体がガレキとクレーン機器の部品で覆われ、残った使用済み核燃料の大部分は疑いなく歪んだり溶けたりしているだろう。
(訳注:4号炉建屋の爆発は水素爆発とされるのが定説であり、3号炉の臨界爆発との混同と思われる。拙ブログ内の参照記事:アーニー・ガンダーセン「フクシマ第1ビデオ・ツア」)
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この作業には、ゲームセンターでお馴染みの機械で遊ぶゲームの一種といえなくもない工程がある。あなたにも、おわかりのはず。何枚かコインを入れ、レバーを操作して、クレーンの爪をテディーベアか人形の上まで動かし、それを降ろし、お目当ての品を掴み、落し口まで持っていって、手に入れるやつである。このゲームのTEPCO(東電)版の場合、使用済み核燃料貯蔵槽(またはその残骸)をまたいでクレーンを設置し、その爪を操作して、ガレキのなか訳注に降ろし、使用済み核燃料集合体を巧みに摘み上げるのだが、それは、ジルコニウム金属包装の核燃料棒を束ねた、長さ4.5メートル、124センチ四角の格子細工であり、それぞれ13トンの重さがある代物なのだ。
訳注:東電によれば、現時点で、4号炉核燃料プール内のガレキ除去作業は終了しているという。
もちろん、ゲームをもっと面白くするために、貯蔵槽が使われていたときと同じく、核燃料集合体はただそこに安置されているわけではない。水面(海水面)下にあり、ガレキに覆われ、腐食し、破損し、ねじれ、絡み合い、おおむね取り扱い不可能な代物である。さらにおっかないことがある。核燃料エレメントを破損するようなことをすれば、まさに以前と同じく、膨大な量の放射能が放出され、日本中に吹き流される。最悪の結末を招くのは、おそらく集合体のひとつを引き抜くさいに壊れて、貯蔵槽内の別の一体の上に落ちる場合だろうが、ふたつの集合体が接近し過ぎるときである。そうなれば、核分裂連鎖が起こり、大量の熱、メルトダウンが発生し、おそらく以前のような大爆発となって、冷却貯蔵槽全体の破壊へと進む。そうならなくても、水が蒸発し、なにもかも発火する。
201386日撮影。福島県職員らと核専門家たちが、東京電力福島第1原子力発電所で高レベル放射能の検出された監視井を視察。(Japan out AFP Photo / Japan Pool via JIJI Press
Another tank with highly radioactive water at the devastated Fukushima nuclear power plant has leaked, operator TEPCO reported on Tuesday. The contaminated water contains an unprecedented 80 million Becquerels of radiation per liter. The norm is a mere 150 Bq. 
すると、なにが起こるのだろうか? まさか、アルマゲドンにはならないだろうが、少なくとも日本に限っていえば、それに近いだろう。北日本の住民を韓国、中国、その他に避難させる不測事態計画がきっとあるはずだ。おそらくは、大量の放射能が風下に遠くまで吹き流されて、アメリカまで届くだろうが、それには多くの恐ろしい種類のものが含まれている。
4号炉の使用済み核燃料貯蔵槽の内容物を、放射性核種ということでおさらいしてみよう。筆者は、前回の記事のあと、放射性核種汚染物質のリストが充実していないとお叱りを受けた。だから、わずらわしいと思われる読者もおられようが、名誉挽回のため、ここに記録しておこう。それは致死性物質の印象的なリストになる――
ストロンチウム89、ストロンチウム90、イットリウム90、ジルコニウム95、ニオビウム95、ルテニウム106、ロジウム106、アンチモン125、ヨウ素131、キセノン133、セシウム137、セシウム134、(大量の)セリウム144、プロトアクチニウム147、ユウロピウム154、プルトニウム238239240241、アメリシウム(その通り)241243、キュリウム242243244、そして、もちろんウラニウム238235234
以上が、主だったものである。もっと多くあるし、上記のものが崩壊したあとの娘核種もある。4号炉の使用済み核燃料プールのなかにあるこれら核種の総放射能量は、約1021ベクレルであり、これから希ガス類とヨウ素類を除外すると、1020(つまり、1の後に020個)になるだろう。チェルノブイリの放出量の推定値によるが、たぶんチェルノブイリ事故の5倍ないし100倍、あるいはそれ以上になるだろう。
以上に列挙したわけは、そうすれば、メディアが放射性セシウム類とプルトニウム類とヨウ素類に集中して報道していれば、きわめて不完全なニュースになってしまうことが実に明白になるはずだからである。これもまた、世論操作なのだ。
内部瞞着(まんちゃく)(ごまかし)
このことから、現代史の苦い一側面に誘われる。筆者の専門分野は、放射性核種による内部被曝の健康効果である。これら上記に列挙した物質がヒトの体内に入れば、どうなるのだろうか? フクシマ核惨事の直後、筆者は放射線リスク欧州委員会(ECRR)モデルにもとづいて計算と予測を実施し、それを20115月、ドイツ放射線防護協会・ECRR共催、ベルリン会議に提示した。
その結果、核事故現場の半径200キロ圏内人口のおよそ1000万人のうち、癌の過剰発症にいたるのは、10年期間内に約20万人、50年期間内では40万人におよぶことが示された。日本政府が固執もし、採用もしている現行リスク・モデルは、国際放射線防護委員会(ICRP)のものである。こちらは、この人口が「非常に低いレベルの線量」に被曝する結果として検出しうる癌の増加を観察することはできないであろうと予測する。
201386日撮影。福島県職員らと核専門家たちが、東京電力福島第1原子力発電所で、放射能汚染水の海中浸出を防止するための装置を視察。(Japan out AFP Photo / Japan Pool via JIJI Press
連中はこの戯言たわごとを金科玉条として、年間「線量」がだいたい20mSv未満であれば、汚染地域で暮らしても安全だといい、そのような場所から子どもたちを避難させるのを拒否してはばからないのだ。ECRRは、チェルノブイリ事故後の汚染領域における病気の増加率を予測して説明していたし、最初に現れる影響は、チェルノブイリのように子どもの甲状腺癌の増加だろうともちろん予告している。ところがICRPとそのモデルを採用している面々は、チェルノブイリにおけるそのような効果を否定している。チェルノブイリで見られる問題の原因は、ウォッカだ、放射能恐怖症だ、などというのだ。あるいは、甲状腺癌を発症したベラルーシの子どもたちは、ヨウ素欠乏症だったという。だから、フクシマは実質的に、両者のモデルの試金石になる。試験は始まったばかりである。
最近に伝えられたところでは、年齢0歳から18歳までの若年者を対象に、福島県立医科大学が実施した甲状腺状態の調査の結果、検査を受けた178000人のうち、12名が甲状腺癌の確定例、15名がその疑い例であることが判明訳注している。これは、2年期間の結果である。最近の査読論文が2005年の年齢0歳から18歳までの日本全国の甲状腺癌発症率を報告しているが、それによれば、10万人中、0.0人の割合である。つまり発症者はいないということになる。大盤振る舞いをして、10万人あたりの年間割合を0.05人としてみよう。これで計算すれば、過去2年期間の発症数は0.18例と予期できるはずだ。じっさいには、最低でも12例であり、最も可能性の高いのは27例である。
訳注:①本節のデータは、201365日開催の第11県民健康管理調査」検討委員会で発表されたもの。②820日、第12回検討委員会の発表では、甲状腺癌18人、疑い例25人。本稿の翻訳中、1112日、第13回検討委員会の発表では、甲状腺癌26人、疑い例33
疫学的に計算すれば、過剰リスクは270.18であり、これは期待値の150倍ということになる。ジャパン・タイムズ紙は「調査に主導的な役割を担う福島県立医科大学の研究者らは、最近の事例が核危機に関連しているとは信じないと発言した」訳注と伝える。それなら、それでいいだろう。残念なことに、たまたま出鱈目(でたらめ)な偶然が束になって重なったのだろうが、これは偶然の一致というか、甲状腺癌の病原として知られる放射性ヨウ素の放出源、フクシマ近傍のできごとなのだ。
訳注:The Japan Times, ‘Thyroid cancer found in 12 minors in Fukushima,’ JUN 5, 2013.
リスク・モデル 
原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)なら、同意するだろう。世界保健機関(WHO1959年以来、少なくとも放射線と健康に関する研究において、国際原子力機関[IAEA]の一部門)なら、やはり同意するだろう。フクシマによる健康への効果に関するWHOの予備報告は、甲状腺線量の最大値は35mSvであり、ほとんどの事例はそれより大幅に低いレベルだったと記す。ICRPモデルにもとづくと、明確に起こっていること、チェルノブイリにおける甲状腺癌の異常発生より悪く、時期も早い甲状腺癌の異常発生の増加が観察できるとは予想されない(と、放射線と健康に関する大御所、ウォルフガング・ワイス博士はいう)。
これは、日本政府(と他の世界中すべての政府)が採用する現行のICRPリスク・モデルが全面的に間違っており、安全でなく、緊急に放棄されなければならない証拠のさらなる断片である。放射線内部被曝はECRRの方法論が示すように、「吸収線量」という単純な概念では評価できない。もっと専門的な説明をお望みなら、筆者の最近書いた記事‘Aspects of DNA Damage from Internal Radionuclides’(「体内放射線核種によるDNA損傷の諸相」)をご参照いただきたい。
筆者は、ワイズ博士が2011年にパリで主宰した放射線研究に関する会議でご本人に会った。このMELODI会議で、筆者はマイクを取り、650人の代表たちに向かって、ICRPモデルは暗礁に乗り上げた死に体であり、それを用いることにより、それが防護するはずだった人びと殺しつづけていると語りかけた。シスコ・サロマー博士(フィンランド放射線防護団体、 STUK)が筆者を追いかけて通路を駆け上がり、危険で狂信的なバズビーからマイクをもぎ取った。
福島第1原発のメディア・ツアーのさい、バスの窓ガラスの放射線レベルを検査する作業員。
AFP Photo / Pool / Toshifumi Kitamura
しかし、ワイズにしろ、サロマーにしろ、その他の放射線当局者らにしろ、ICRPとその他の世界的な放射線防護機関、UNSCEARIAEAWHOを運営しているのが、(彼らと同様に)体内放射能汚染と健康に関する専門家でなく、また稀にしか臨床的な研究技能のない連中であることがよくわかっている。彼らはもっぱらヒロシマ原爆の病理研究だけに頼っているが、それは、内部被曝を無視し、市外対照区と原爆投下後入市対照区の人びとに影響をおよぼしたウラニウムの黒い雨を度外視した代物なのだ。
筆者は彼らの研究出版物を点検してみた。これが典型例だ。彼らに聞いてみよう。彼らの仕事は、公衆の防護ではなく、核産業と軍部の防護であってきた――それに、いもまそうだ。チェルノブイリ惨事のあと、筆者がキエフ滞在中の2000年に彼らの何人かがそこに現れ、放射線の効果について説教を垂れた。彼らの活躍をYouTube動画「真実はどこに?―WHOIAEA放射能汚染を巡って」で見てみよう。2005年には、これらチェルノブイリ惨事の影響による発癌数がヨーロッパで増加しはじめた。スウェーデンのマーティン・トンデルによる研究によって、セシウム137汚染の10万ベクレル/平方メートルごとに過剰発癌リスクが11パーセント上昇することが判明した。トンデルは、彼の上司、ラース・エリク・ホルムによって速やかに処分されたが、このボスは、一時期はICRP委員長を務め、いまはスウェーデン保健庁の医務官である(そうなのだ)。
これらの機関とその代弁者らは、再三再四、みずからの目の前のできごとを否定してきたのだ。10億単位のドルが、癌研究、放射線調査に注ぎ込まれながら、イラクの劣化ウランによる体内放射能に被曝した人たちに対する疫学研究の実施はなにも企画されず、チェルノブイリ汚染や大規模に汚染されたバルチック海沿岸部に対する資金は減額されてきた。先刻、承知のことである。筆者は、ラトビア工科大学とカロリンスカ医科大学(スウェーデン)の仲間たちと、バルチック海沿岸部における癌について調べる申請をした。試飲提供はおろか、データ提供も拒否された。
この恐ろしい不慮のフクシマ実験による証拠がますます浮上するにつれ、現実に対する危うく不正確な科学評価を振りかざしている諸国政府や放射線関連の諸機関をわれわれが頂いていることがますます見えるようになるだろう。さらにまた、人類史上有数に深刻な地球規模の公衆衛生上のできごとが、力量や信頼性において、ほめられるべき実績のない民間営利企業によって監督されているのである。
また、この鏡の中の世界にふさわしいことに、正義とデモクラシー、これら両者が逆転した奇妙な反響のなか、われらが難破した船は、船体内に注水することによってのみ救われるのだ。
われわれを落ち込ましてきたし、いまも落ち込ましている、これらの連中をなんとしようか? 連中は全員、実質的な戦争犯罪人として、この新しい戦争では、この惑星およびその無垢の生息者たちに対する不可視の遺伝性毒物投与の罪で法廷に引き立て、審判し、獄に送らなければならない。
欧州放射線リスク委員会、クリストファー・バズビーによるRT寄稿



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クリストファー・バズビー Christopher Busby






クリストファー・バズビーは、健康に対する電離放射線の影響に関する専門家。ロンドン大学およびケント大学で化学物理学の資格を取得し、ウェルカム財団で生きた細胞の分子化学物理を研究。バズビー教授は、ブリュッセルに本拠を置く欧州放射線リスク委員会(European Committee on Radiation Risk)の科学委員であり、1998年の同委員会の設立時以来、その出版物の多くを編集してきた。彼は、アルスター大学保健学部の客員教授など、いくつかの大学の名誉職的な地位を保持し、現在、ドイツ、ブレーメンはヤコブス大学の招聘(しょうへい)研究員である。彼は著書“Wings of Death”(1995年刊、『死の翼』)において、諸国政府が採用している放射線リスク・モデルが、劣化ウラン兵器やストロンチウム90によるもののような体内放射性核種被曝の場合、安全でないと論じ、彼はまた、1980年にはじまった世界規模の癌の異常発症が1960年代の大気圏内核実験の結果であることを示した。彼はこの課題を追跡調査し、200年刊“Wolves of Water”(『水の狼たち』)において、癌とアイリッシュ海の放射能汚染を検証したが、この調査はアイルランド自由国の資金供与を得ていた。放射線効果に関する疫学的研究の実績が数件あり、ごく最近では、イラクのファルージャで研究している。バズビーの現在の居住地は、ラトビアのリガである。

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