2014年11月23日日曜日

コモン・ドリームス【評論】核メルトダウンをめざすボウリング大会(そして火にガソリンを注ぐ)

Common Dreams




20141031
核メルトダウンをめざすボウリング大会
(そして火にガソリンを注ぐ)

Bowling for Nuclear Meltdowns
(and Throwing Gas on the Fire)
ジョン・ラフォージ John LaForge
2013417日、東京電力福島第一原子力発電所の施設解体計画を検証するIAEA訪問団の専門家らが4号炉視察を終える。(Photo Credit: Greg Webb / IAEA / flickr / cc
放射線基準を緩和する。自己責任に上限を設ける。改良に代えて、原子炉プロパガンダ。期限切れを超えて古い原子炉を動かす。設計仕様を超えてエンジンを回転させる。…われわれはメルトダウンを切望してやまないと思えるだろう。
環境保護局は重大漏出事故後の放射線被曝限度の引き上げを勧告した。ガタのきた原子炉をただちに停止するよりも、人間の被曝量拡大を許容して、業界を十把一絡げに救おうというのだ。
環境保護局の提案は、三重メルトダウンのはじまった3年前、日本が人間に耐えられると判断できる放射線被曝許容限度を――20倍に――引き上げたからであり、フクシマに後押しされた戯言である。20113月のメルトダウン以前、私人の居住空間における日本の許容放射線量は1年あたり1ミリシーベルトだけだった。いま、限度は1年あたり20ミリシーベルトである。これは安全基準ではなく、ただの許容基準であり、むしろ、日本の1,000平方マイルの土地を厳格な基準に合わせて除染するコストが銀行を破産させかねないので、お手頃基準である。
プライス・アンダーソン法は、過酷事故や攻撃にあたる事象のさいの米国の原子炉所有者の責任限度と納税者の負担を規定している。この法律は、わが国で進行中のメルトダウン賭博が電力会社にもたらす何兆億ドルもの財務リスクを免除する。次にまたメルトダウン災害が起こっても、オーナーは破産せず、国が破産するかもしれない。
フクシマは、歴史上のいかなる災害よりも大量に寿命の長い放射性化学物質を大気、土壌、海に放出した。だが、世界のいたるところで耳にする呪文はこうだ――「線量レベルは低いし、ただちに危険はない」。原発推進者たちはフクシマに対するドイツの答――原子炉の恒久的な段階的閉鎖――から身をかわすことを期して、あらゆる機会を捉えてこのマントラを繰り返し唱え、放射線の健康と環境への影響を警告する声をほとんど掻き消しています。
読者諸氏はPSR(社会的責任を果たすための医師団)20113月刊『フクシマ原子炉から放出された放射能による健康リスク~米国在住者に心配があるか?』(英文PDFダウンロード)について、お聞きになったことがおありだろうか? あるいはIPPNW(核戦争防止国際医師会議)20146月刊『UNSCEAR報告書の批判的分析』(日本語PDF)、201211月刊『達成可能な最高水準の身体および精神の健康を享受するすべての人々の権利に関する国連特別報告者の報告書』(英日対訳)、またグリーンピースの重要報告2件『フクシマの教訓』『フクシマ・オールアウト』(英文PDFポータル)はいかがだろうか? Noの場合、連邦政府のご推薦は、国連科学委員会のあきれた報告概要(国連広報センターお知らせ)を読むことであり、それはフクシマの影響が「識別できる見込みなし」と主張している。この結論は、調査実施の前に決められた。
原子力規制委員会が米国の原子炉の80年間運転を許すなら、放射能災害の可能性は拡大するだろう。これが、デューク電力、ドミニオン電力、エクセロンがいまペンシルヴェニア、ヴァージニア、サウスカロライナで操業中である築40年のガラクタのうち、7基について提案していることなのだ。
これら7基の原子炉はこの10年間のうちに閉鎖されるように設計され、認可されたものなのだ。しかしながら、核産業は1991年以来、70件の「免許期間延長」を与えられ、一般的に20年間の操業期間追加を享受してきたのである。いま、オーナーたちは自分たちの原子炉に余分の40年間操業を欲しがっている。
原子力規制委員会の前委員、ジョージ・アポストラキスは、委員会がこの案を考慮したとき、アポプレクティック(お怒り)でなかったが、ニューヨーク・タイムズ記事によれば、「これらの設計、90年昔の設計、100年昔の設計で、まだ稼働しても安全であると、どのように国民に説明するのか、わたしにはわからない」と発言している。委員会が80年間運転案に判断を下すのは、まだこれからのことだが、これまで免許延長申請を拒んだことは一度もなかった。
フクシマ型旧式エンジンをふかす
原子力規制委員会は統治しているはずの業界の囚われの身になって、「発電出力増強」申請149件を認可し、まさしく1件を却下した。発電出力増強とは、古い原子炉の操業開始時の免許条件を超えて出力を高めることである。その方法として、炉心に余分の燃料棒を装填し、しめしめとほくそ笑みながら、より激しく反応させるのだ。
背筋がゾクッとすることに、米国で稼働中の原子炉23基がフクシマ型のゼネラル・エレクトロニクス製マーク1の複製品である。これらのポンコツのうち、15基が増強を認められ、15基のうち、7基が第2次発電出力増強を認められた(下図参照)。ペンシルヴェニア州のサスケハナ原発では、稼働年数31年のフクシマ・クローン原子炉2基が総毛立つような3度目の発電出力増強を認められた。
フクシマ複製型
出力増強:
実施年&増強率
2次出力増強:
実施年&増強率
3次出力増強:
実施年&増強率
モンティセロ           MN
43
1998 6.3
再度2013 12.9

ハッチ    1号機  GA
38
1995 5.0
再度2003  1.5

       2号機
34
1995 5.0
再度2003  1.5

ピーチボトム 2号機   PA
40
1994 5.0
再度2002  1.62

        3号機
40
1995 5.0
再度2002  1.62

サスケハナ     1号機
31
1995 4.5
再度2001  1.4
再々度2008 1.3
          2号機  PA
31
 1994 4.5
再度2001  1.4
再々度2008 1.3
MN=ミネソタ州、GA=ジョージア州、PA=ペンシルヴェニア州。
出処:米国原子力規制委員会『出力増強を認可された申請』(Approved Applications for Power Uprates)。



放射能産業界(ロイター記事)と原子力規制委員会(ブルームバーグ記事)はフクシマ後の安全性向上の否定や遅延に励んでいるが、原子炉操業者らが年季物のウラニウム燃料ポンコツを崖っぷちに走らせているときにアクセルを踏みこめば、みなさんはどうお感じになるだろうか?
【ライセンス】
本作品はクリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0 非移植のもとでライセンスされています。
【筆者】
ジョン・ラフォージJohn LaForge Nukewatch スタッフ、その季刊誌の編集者。

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