2014年12月7日日曜日

ENENews【論文概要】日本政府が出資した研究がフクシマ由来のプルトニウムとウラニウムを東海村で確認


ENENEWS


日本政府出資による研究報告:フクシマから100キロ以上離れた地点でMOX燃料粒子を発見――3号炉爆発のあと、プルトニウム239レベルが「有意に上昇」――核燃料物質が大気中を長距離を隔てて運ばれる
2014125日 ENENews
American Chemical Society (2014):『原子炉水素爆発の数日後に120キロ離れた地点で福島第一原発由来の空中伝播プルトニウムと非天然ウラニウムを発見』抄録(強調は引用者による)
  • 損壊した福島第一原発から放出されたプルトニウムが確認された…福島第一原発からのPu(プルトニウム)およびU(ウラニウム)の大気中放出はいまだ周知されていない。福島第一原発から120キロ南西の地点で…われわれはPuUの同位体組成を分析した。
  • 空中浮遊粒子試料に含まれるウラニウム…原子炉水素爆発直後の数週間、n(236U)n(238U)の比率が以前より高まったことが認められた…われわれはフィルターに捕捉されたUにおけるn(236U)n(238U)比率の上昇が福島第一原発事故の影響であると結論した。
  • 空中浮遊粒子試料に含まれるプルトニウム0.07 cps(秒あたりカウント)より有意にカウント率が上昇した239Puが試料5点で見つかった…試料5号の239Pu成分は…[8,900,000]原子であった…Puに富む試料5点のn(240Pu)n(239Pu)およびn(241Pu)n(239Pu)は…福島第一原発近傍の散在物試料に認められた比率に対応していた。
  • この研究で見つかったPuおよび非天然由来Uは、ほぼ間違いなく3号機原子炉の水素爆発によるプルームで運ばれたものであり、この原子炉はウラニウム燃料に加えて、ウラニウムとプルトニウム酸化物の混合燃料(MOX)が装填されていた。ガンマ線量率は…315日に上昇しはじめた…この観測結果と風向データを併せて、315日に異常なPuUが福島第一原発からのプルームによって120キロ以上の距離を超えて運ばれたと推測しうる…本研究で検出されたPuUは、なんらかの経緯で核燃料から分離した小粒子であり、風に乗って長距離を運ばれたものであると推測できる。これはわれわれの知るかぎり、福島第一原発からの核燃料物質が120キロの距離を超えて大気中を運ばれたことを、Puおよび非天然由来Uの分析データを用いて示した最初の検証である。
  • 本研究は、ヘルムホルツ協会ミュンヘン、ウィーン大学、カールスルーエ工科大学、日本の原子力委員会から資金を提供されている。  



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要約AG1
原子炉水素爆発の数日後に120キロ離れた地点で福島第一原発由来の空中伝播プルトニウムと非天然ウラニウムを発見
2011311日、北西太平洋で大規模な地震(マグニチュード9.0)が発生し、津波を起こして、福島第一原発に深刻な被害をもたらした。事故の結果、放射性セシウム、ヨウ素など、膨大な量の核分裂生成物が放出された。核燃料物質の主成分であるプルトニウムとウラニウムを含むアクチニド類もまた大気中に放出された。しかしながら、アクチニド類が危険要因であるものの、量が少なく、分析も困難であるため、環境試料中のアクチニドを正確に分析することは困難である。われわれは本研究において、事故の前後に福島第一原発から120キロ離れた地点で採集された空中浮遊粒子資料に含まれる、空気伝播プルトニウムとウラニウムを分析した。プルトニウムと非天然ウラニウムの同位体比率分析の結果、フクシマ由来のアクチノイドが原子炉爆発の2日後に120キロ離れた地点に到達したことが示された。得られた結果にもとづき、プルトニウムの実効線量を計算した。その結果、線量効果が放射性セシウムとヨウ素のそれよりも小さいと判明したが、プルトニウムが人間の健康に危険をおよぼす可能性が示されている。この研究は、質の高い分析技術を駆使してこそ実施可能である。この研究結果は、福島第一原発からこれほど離れた地点の大気中におけるフクシマ由来の空中伝播プルトニウムと非自然ウラニウムに関連する最初の知見であり、最初に出版されるものである。
出版要目:
Shinonaga T, Steiner P, Lagos M, Ohkura T. (2014): Airborne Plutonium and Non-Natural Uranium from the Fukushima DNPP Found at 120 km Distance a Few Days after Reactor Hydrogen Explosions. Environmental Science & Technology 2014; 48: 3808-3814.
ヘルムホルツ協会ミュンヘンによる研究の重要性:
ヘルムホルツ協会ミュンヘンは、健康に対する悪影響を防止するために環境中の放射性核種と放射線防護を研究している。福島第一原発事故後におけるアクチノイドのふるまいについて、原子炉に近い現地で調査してきた。われわれは、得られた分析結果を用いて、プルトニウムの実効線量を計算した。研究結果は、原発事故で放出されたアクチノイドのふるまいに関する重要な情報を提供するものであり、人間の健康に対するリスクの評価に用いることができる。

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