2015年1月22日木曜日

セラフィールド――世界一危険な核廃棄物施設のショッキングな状態



セラフィールド――
世界一危険な核廃棄物施設の衝撃的な状態
フレッド・ピアース Fred Pearce 2015年1月21日
核時代の黎明期にまで遡る放射性廃棄物を抱える英国のセラフィールド。Image: Sellafield Ltd
謎めいたスラッジの巨大なプール、漏れのあるサイロ、爆発の危険――セラフィールドは支援を必要としているのに、英国政府は浄化を実施している企業体をお払い箱にした。
世界で最も危険な放射性廃棄物貯蔵施設2か所で安全上の懸念が高まっているにもかかわらず、急を要する浄化作業は少なくとも5年間は延期されるであろう。
その廃棄物は、核時代の黎明期にまで遡る時代の放射性廃棄物を抱える英国のセラフィールド核再処理施設で保管されている。放置された施設で事故が発生すれば、放射性物質が大気中に放出され、英国全域とその彼方まで拡散しかねない。
英国政府は先週、民間共同企業体に委ねていたセラフィールド浄化作業の800億ポンド[143000億円]契約を破棄し、外郭団体の原子力廃止措置機関NDA)に再度その仕事を任せることにした。浄化作業は2120年に完了する予定であり、英国政府の年間支出は1900万ポンド[34億円]である。
民間共同企業体であるニュークリア・マネジメント・パートナーズは、2008年当時のエネルギー大臣、マイク・オブライエンの声明によれば、「世界有数の専門技能を導入」し、それによって政府は「数十年間、無為に過ごしても、遺産を相続できる」はずだった。だが、この民営化実験は6年目に放棄されてしまった。
この突然の再国営化は、優先的に浄化される4か所の廃棄物保管施設のうち、2か所で遅れが出たのを受けたものである。4か所の貯蔵槽とサイロは60年間以上の操業で貯めこまれた高レベル放射性物質を何百トンも収容している。朽ちかけた構築物はひび割れ、土壌に廃棄物を漏出し、腐食で発生するガスによる爆発のリスクを抱えている。
昨年4月に公表されたNDA事業計画[NDA Business Planによれば、使用済み燃料および1950年代から60年代にあたる英国初期の核兵器製造の廃棄物を収容している100メートル中堀燃料貯蔵槽の保管物除去は2025年までに完了する計画になっていた。だが、協議のために12月に配布された新たな事業計画案[NDA Draft Business Plan]の予定表によれば、この作業は2030年までに完了しない。1964年以来、満杯になっている高さ21メートルの中堀燃料被覆サイロも同じように、除去作業の完了予定は2024年ではなく、2029年になっている。
NDA広報担当者はニュー・サイエンティスト誌に次のように語って、予定変更を認めた――「独特の技術的な課題、それに、廃棄する方法も考えずに建造された、これらの施設の複雑さを考慮すれば…計画に不確実性がつきまとい続けます」。
セラフィールドは1940年代末、英国の原子爆弾のプルトニウムを製造するためにイングランド北西部、カンブリア州の海岸に建造された。用地内に世界初の商業用原子力発電所も抱え、また原子炉の高レベル放射性廃棄物の貯蔵センターにもなった。
高レベル放射性廃棄物の大半は、それぞれがオリンピック水泳競技用プールの数倍の規模の貯蔵槽に廃棄された。常時循環している冷却水が廃棄物を低温に保っているが、燃料棒の金属被覆を腐食させ、数百立方メートルのスラッジを発生させてもいる。
その結果、貯蔵槽の正確な内容物は不明であると、セラフィールドの政府所管、国立核研究所の業務執行監督、ポール・ハワース(Paul Howarth)はいう。「モノを回収する方法を究明する前に、在庫の特性を明らかにするためだけで、われわれは研究開発をどっさりこなさなくてはなりません」。
そして、問題は悪化する一方である。将来、施設が閉鎖されるとき、廃棄物はやはりセラフィールド送りになる。英国の施設は、大部分が鋼鉄でなく、コンクリート製であり、そのため、解体がずっと困難になると、マンチェスター大学のティモシー・アブラム(Timothy Abram)はいう。それはまた、30倍の放射性物質が発生することも意味する。それに、サマセット州[イングランド南西部]ヒンクリー・ポイントで新たな原発が建造されようとしているので、セラフィールド送りの放射性廃棄物の量が増えるかもしれない。
もうひとつの独特な遺産は、燃料被覆材に使われ、セラフィールドで保管中の90,000トンの放射性黒鉛である。黒鉛は放射線を浴びると、ウィグナー・エネルギーと呼ばれるエネルギーを蓄積し、これが1957年の英国最悪の核事故の原因になった。研究者らはいまだに安全性に信頼の置ける放射性黒鉛の廃棄法がわかっていない。
他の欧米諸国は古い核施設をできるだけ早く解体する政策を採用しているが、英国はまず1世紀かそれ以上長く先延ばしするように計画している。すでに存在しているものを浄化する前に、もっとたくさんの放射性廃棄物を欲しがるものはいない。
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本稿の印刷版の表題は、"New delays hit Sellafield clean-up"[「セラフィールド浄化作業に新たな遅れ」]。
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危険分野
パイル1号炉は、英国の原子爆弾プロジェクトを支えるために建造された原型炉2基のひとつである。1957年に炉心が発火し、国内最悪の核事故になった。火災が収束したとき、炉心は封印され、目下のところ、放置しておくのが最善の策であると考えられている。
パイル燃料貯蔵槽は、兵器用原子炉と発電用原子炉、両方の使用済み燃料を収容している。放射性廃棄物に加えて、貯蔵に要する作業で生成されたスラッジが、水を満たし、劣化しつつあるコンクリート構造物のなかに格納されている。スラッジの除去作業が進められている。この貯蔵槽は1970年代以降、廃棄に使われることもなく放置されてきた。
パイル燃料被覆サイロは、燃料棒を囲い込む3200立方メートルのアルミ被覆をびっしり詰め込まれ、その多くは1950年代の兵器用原子炉から送られてきた。これは1960年代中ごろ以来、封印されているが、腐食のため、水素が発生し、爆発につながる恐れがある。
使用済みマグノックス炉燃料貯蔵槽は、ヨーロッパで最も危険な産業建造物であると考えられている。長さ150メートルの露天貯蔵槽に鳥が飛来し、ひび割れのため、放射性物質が土壌中に漏れだしている。そこになにがあるか、誰にもわからないが、1トンものプルトニウムを収納しているかもしれない。
マグノックスくず保管サイロは、ヨーロッパ第2の危険な産業建造物であると考えられている。これは、燃料のマグネシウム被覆を水中で保管している。コンクリートのひび割れからスラッジの一部が漏れだし、貯蔵容器の腐食によって放出される水素のため、爆発のリスクを抱えている。
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