2015年8月16日日曜日

軍事情報誌ディフェンス・ワン【寄稿】デニス・ブレア「安倍晋三はアメリカに必要な同盟者」


 MICHAEL DWYER/AP

安倍晋三はアメリカに必要な同盟者

デニス・ブレア DENNIS BLAIR 2015427

水曜日にはじまる日本の指導者の訪米は、イラクとハイデル・アル=アバディやイスラエルのベンジャミン・ネタニヤフの訪米とは著しく対照的なものになるだろう。


筆者
デニス・ブレアは、退役米国海軍大将であり、笹川平和財団USAの会長。国家情報長官、米国太平洋軍司令官、統幕事務局長を歴任。Full Bio

アメリカのもてなしには近ごろいろいろと制約が多いが、今週、日本の安倍晋三首相を歓迎する絨毯を敷くときには、まったく違った雰囲気になるだろう。最近のワシントン訪問客を思い返してみよう。イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相は先月、イランについてわれわれに講義するためにやってきた。イラクのハイデル・アル=アバディ首相は先週、わが国がすでに2兆ドルとアメリカ国民4,425名の人命を差し出した国にもっと提供してほしいとわれわれに懇願するためにやってきた。だが、木曜日、ワシントンに到着する安倍氏は得難い例になるだろう。信頼できる一貫した同盟者であり、われわれに講義を垂れたり、われわれに長広舌を振るって、追加的な財務・軍事援助をねだったりせず、アメリカとの友情と協力を称えるためにやってくるのだ。

首相の個人史は圧倒的である。彼は2006年に戦後日本で最年少の総理大臣になったが、部分的には彼の健康問題のために1年しかつづかなかった。さほど達成した成果もなく、日本政治における重要な当事者になると信じる理由はほとんどなかった。しかしながら、その後の5年のあいだに、彼は忍耐強く党内の支持を回復したのみならず、彼の国を経済不振から揺さぶりだし、国家安全保障政策を全面的に見なおし、人口と生産性にまつわる課題に挑戦する政策と計画の斬新な枠組みを作りあげた。

彼は2012年に総理大臣の新た任期を勝ち取り、その後、活動的で断固たる世界指導者のひとりになった。彼はまた「野党時代」に練りあげた計画を実行に移し、尋常でなく広範な問題に影響をおよぼしている。

彼は経済戦線において、財務対策、金融刺激策、構造改革という3本の矢からなる経済総合対策に着手した。その結果、日本の成長が噴出し、その中・長期間にわたる持続が約束されている。日本の労働力に占める女性の数があらゆるレベルで増加し、強力な農業ロビー団体、JA全中が改革され、その影響力が削がれた。おまけに日本は先週、2008年以来で初めて中国を追い越し、アメリカの最大債権者に帰り咲いた。

安倍氏は日本で初めての国家安全保障政策を書き、憲法解釈を改訂して、米国、その他の提携諸国と協調した国防施策を実施可能にし、国の国防予算を増額した。彼はまた50か国以上を訪問し、2回目の選挙に大差をつけて勝利した。

日本のような長期に渡る同盟国の成功は、どの場合でも米国にとって重要であるが、安倍氏の政策と行動の基盤的な原則のひとつが、米日関係支持である。他の友好国がアメリカの不動ぶりをあけすけに問い、わが国との関係を一品料理メニューのように扱っている――わが国を支持する場所、時、方法を選んで、つまみ食いする――とき、日本は米国との協調関係を全面的に深めてきた。安部首相は、在沖縄米軍基地の移設など、国内政治の面で犠牲を払っても、あるいは、イランとロシアに対するわが国の制裁に対する支持など、日本の経済的・戦力的利益と合致しない場合でも、わが国の政策を支持してきた。

米国と日本は安部首相の訪米に合わせて、二国間防衛指針を18年ぶリに改訂し、危機や紛争の場合における相互防衛行動の新たな方策を設定すると発表する予定になっている。われわれはまた、世界最大の経済大国と世界第3の経済大国の経済関係の新たな基準を設定する貿易協定である環太平洋提携協定、すなわちTPPの合意の寸前にある。米日両国がTPPで合意すれば、他の10か国が協定を締結する部隊が整い、中国など、他の多くの国ぐにのためにも、その後の加盟交渉の扉を開くことになるだろう。TPPは安全保障に関連する問題でもある。アッシュ・カーター国防長官は最近、「TPP成立は新規航空母艦と同じほど重要である」と語っている。

日本の戦死者たちとともに有罪宣告を受けた戦犯らを追悼する靖国神社の参拝など、安倍氏の他の行動は歴史の傷を再び開いてきた。植民地・軍国主義期の日本の振る舞いに関する、いくつかの煮え切らない発言は、日本が苦労して達成した、悔恨と平和の成就の評判を台無しにする無神経を示してきた。

しかしながら、日米両国が互いに戦った激しい戦争から70年たって、両国は――大部分は安倍晋三氏の努力のおかげで――かつてないほど強く、死活的に重要で、際立って強靭な関係を築きあげた。われわれはいくつかの政策や振る舞いについて互いに懸念するであろうが、両国間の戦略的提携関係は不可欠である。

このような友情の故に、たぶんワシントンは安倍氏のために恒久的な部屋を町内に用意すべきであるだろう。

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